【実例②】脳血管障害〈1〉

[基礎データ] 病名:脳出血後遺症
患者:70代 男性 Sさん
事前経過
 Sさんは、70歳の頃より高血圧になり、自宅近くの診療所へ通院していた折、仕事中に突然、左半身のしびれが出現し救急病院へ。CT検査にて脳出血が認められましたが、高齢なこともあり、除去手術を行わない保存的治療が施されました。
  病状としては、重度の左半身麻痺のほか、例えば、お皿の半分を無視して食べ残すなど、半側空間への視覚や聴覚、触覚などを無視して行動してしまう左半側空間無視、注意障害などの高次脳機能障害も確認。経鼻経管栄養から経口摂取への移行が開始された段階で、当院へ転院されてきました。

当院での治療
 転院当初の動作状況は、食事は一部介助で可能ですが、歩行は不可、トイレ動作は全介助、車椅子への移乗動作は重度介助を要し、排泄はオムツ使用。Sさんの入院リハビリはこの状態からスタートしました。
  「口から食事をしたい」という本人の希望により、まず、摂食機能訓練から開始。呑み込み動作を調べる嚥下(えんげ)造影検査をしたところ、口腔残留や喉頭蓋谷(→①)への残留が認められたため、水分はとろみをつけて摂取することなどの条件を決め、嚥下食を開始しました。
  妻との二人暮らしを強く願う本人の気持ちも後押しとなり、根気よくリハビリを行ううち、日常生活動作は徐々に回復。食事動作は自立、トイレ動作は一部介助、下肢装具をつけて平行棒内歩行2往復可能、車椅子への移乗動作は軽介助で可能、車椅子駆動も見守りで可能となるなど、Sさんの希望通り、在宅療養への道が開けてきました。
在宅療養へ
 当初から在宅療養を強く希望されていたことから、入院間もない頃、退院後の生活を想定した自宅への退院前訪問を看護師、リハビリスタッフ、ケアマネージャーらで実施。自宅での車椅子生活を予想し、玄関口の段差解消、レンタルベッド、ポータブルトイレ使用、デイサービスの利用などが検討されていました。
  実際の退院に備え、玄関口の段差解消には、福祉用具貸与にて玄関段差昇降機(→②)を設置。家人への介護や機器操作などの指導も行われ、入院後4ヵ月で無事、退院を迎えました。退院後は、妻の介護負担の軽減、本人の脳活性化リハビリも考慮し、デイサービスを週5日利用しながら、念願だった妻との二人暮らしの在宅生活を送られています。

①喉頭蓋谷(こうとうがいこく)

食物が食道に送られる際、通常1秒ほど気道に蓋をする役目をするのが喉頭蓋。この喉頭蓋と舌根との間にできる谷間のことです。

②玄関段差昇降機