【実例③】脳血管障害〈2〉

[基礎データ] 病名:くも膜下出血後遺症
患者:70代 女性 Bさん
事前経過
 Bさんは70歳の折、自宅で突然、意識障害をきたし、救急病院へ搬送されました。診断された病名は、脳動脈瘤の破裂による「くも膜下出血」。幸い、緊急コイル塞栓術(→①)が奏功して命を取りとめ、全身状態が落ち着きを取り戻したことから、3ヵ月後、当院へリハビリ目的で転院されてきました。
当院での治療
 入院時は、気管切開、膀胱留置カテーテル、経鼻経管栄養と、まさに全身に管がつながった状態。意識は名前を呼べば小さな声で返事が可能な程度、日常の生活動作には全介助が不可欠の状態でした。
  その後、意識状態が徐々に回復するにつれ、同室の患者に手を振ったりする行為などが見られるようになり、入院1ヵ月後、平行棒内立位訓練からリハビリを開始。意識状態のさらなる回復とともに、四肢・体幹の筋力も徐々に回復。10ヵ月後にはT字杖歩行訓練ができるまでに向上しました。
  そして、1年後には気管切開カニューレを抜去するまでになり、経管栄養と並行して嚥下食を開始。この頃から、本人も前向きになり、「大好きなおじやが食べたい」という強い欲求を受けて、摂食機能訓練を強化。その甲斐あって3ヵ月後には経管栄養を中止し、すべて経口摂取になるまで回復し、食事内容も次第に米飯・軟采食が可能になっていきました。
在宅療養へ
 経口摂取は体力や知力の回復をもたらします。経口摂取が回復したことで、四肢の筋力はさらに向上、戸外の歩行も一部介助で可能となり、在宅療養への期待が大きく高まってきたのです。
  それを受け、看護師、リハビリスタッフ、ケアマネジャーらが顔を揃えての退院前ご自宅訪問を実施。手すり、階段の設置が必要と判断し、それらが自宅に設置されるのを待って退院となりました。
  退院後は、デイサービス週2回、訪問看護週1回、訪問リハビリ週2回を利用。1ヵ月後に退院後訪問を行い、在宅療養が不自由なく送られているのかをBさんにお聞きしたところ、計画どおり介護サービスを受けていると、明るい表情で報告してくれました。

①緊急コイル塞栓術

頭を切らずに足の付け根の大腿動脈等から、マイクロカテーテルと呼ばれる細い管を大動脈を経由して脳動脈瘤の中にまで挿入。プラチナ製の柔らかい糸状のコイルを、脳動脈瘤の形態に応じて何本も脳動脈瘤の中に詰め込み、破裂しないように処置する手術。