【実例⑦】大腿骨頚部骨折

[基礎データ] 病名:腿骨頚部骨折から認知症へ進行
患者:70代 女性 Nさん
事前経過
 以前から糖尿病と高血圧の治療で外来通院していたNさんが、ある日、自宅の浴室で転倒し、大腿骨頚部を骨折。急性期病院で骨接合術を受けた後、しばらく入院されていましたが、全身状態がひとまず安定したことから、当院へ転院してこられました。
  体幹を支える大腿骨頚部骨折は単なる骨折というレベルで片づけられるものではありません。中長期間の安静が余儀なくされることから、体力や筋力の衰えばかりでなく、無気力状態の長期化が起因して認知症につながるケースも多く見られます。残念ながら、Nさんの場合もそうでした。
当院での治療
 Nさんを迎え入れた当院がなすべきことは多岐に渡っていました。食事動作以外の日常生活動作のすべてに介助が必要で、持病である糖尿病のコントロールも不安定になりがち。特に夜間は、認知症の症状が顕著に現れ、不穏な行動がみられることも多々あります。しかも、リハビリを行う際のコミュニケーションもままならないという状態にどう対処し、好転させていくのか。
  スタッフも正直、苦戦を強いられていましたが、まずは心の通い合いが一番大切と根気よく話しかけているうち、次第に精神面が安定していくのが手に取るようにわかりました。そこを突破口に、リハビリにも少しずつ積極姿勢が見られるようになり、座位から立位、車椅子歩行、杖歩行へとリハビリを進めていきました。
  筋力が戻るにつれ、最低限必要な日常生活動作も徐々に回復。自宅療養も視野に入ってきましたが、最後のハードルはやはり、いつ頭をもたげるかも知れない認知症でした。夜間のトイレ時など、一人ではまた転倒する恐れもあり、再骨折となれば元も子もありません。いつも誰かが側にいる、そんな日常生活の見守りが必要であることを考えると、退院後の生活計画は難渋を極めました。
自宅療養に向けて
 Nさん宅は幸い、自宅を仕事場に自営業を営んでおられ、家人はいつも自宅にいます。自宅療養に向けたテストとして、まず自宅への短期外泊に取り組んでみることにしました。その結果、日中は顔見知りの人と会話がはずむなど、以前と変わりない様子でしたが、病院での日常と同様、夜間になると自宅のトイレが分からなくなるなど不穏行動が目立ち、頻繁に家人の手が掛かる状態が見られました。
  そうした状況を踏まえ、ケアマネジャーを含めて最終的に検討した結果、小規模多機能型居宅介護「サンライズこんぴら」(→①)を夜間のみ利用。日中は自宅で過ごし、その日の調子によっては自営のお店にも顔を出すという生活設計を基本に、退院の日を迎えることになりました。
  認知症を抱えながらも、できるだけ家族とともに過ごせる時間を持てるよう配慮したことがNさんの気持ちに届いたのか、退院後はシルバーカーを使用して歩行できるようになり、日常生活に大きな問題もなく、心身ともに安定した自宅療養の日々を送られています。

①小規模多機能型居宅介護
 「サンライズこんぴら」

 多機能な介護支援サービスが、通い・泊まり・訪問など、利用者の状況に合わせて自在に活用できる地域密着型サービス。365日・24時間、切れ目のない安心の在宅生活が送れるよう支援しています。