【実例⑭】クロンカイトカナダ症候群、多発性脳梗塞
1年で経管栄養から3食経口摂取へ。
ステップアップする嚥下訓練と食べたくなる工夫の嚥下調整食で実現。
[基礎データ]病名:クロンカイトカナダ症候群、多発性脳梗塞 患者:70代 女性 Nさん
事前経過
難治性下痢あり。前病院で精査の結果は、消化管ポリープが発症する指定難病のクロンカイトカナダ症候群。幸い治療後には軽快しましたが、翌年、脳梗塞を発症。口や舌、声帯などに障害が生じ、うまく発声ができなくなる構音障害、右片麻痺の症状が見られました。経口摂取も困難となり、経鼻経管栄養となった状態で、引き続きリハビリを行うため当院へ転院となりました。
当院での治療
当院に入院後、まず実施したのは、経口摂取の状況を精査するための嚥下造影検査。食べ物を口からのど、そして食道へと送り込む動きが弱くなっており、誤嚥も認められました。
これを受けて取り組んだのは間接嚥下訓練です。2ヶ月経過し、再度、嚥下造影検査をしたところ、食べ物の通過が改善している所見が見られ、これを受けて食事形態を見直し。経管栄養との併用で、昼のみではあるものの、粥ゼリー、ペースト状の副菜、お茶ゼリー等の嚥下食を経口摂取できることとなったのです。
Nさんの経口摂取に対する意欲は高く、「早く食べる練習がしたい」と常々言っていました。栄養科でもNさんの思いに応えようと、見た目を食欲が出るような形態に工夫した成果もあってか、摂取量も良好。1ヶ月ごとに嚥下造影検査検査をしながら、食事形態を変更し、経口摂取の割合を少しずつ増やしていきました。そして、6ヶ月を経過した頃には、経管栄養と併用しながら、朝昼夕の3食経口摂取ができるようになったのです。
さらに、「鼻のチューブがなくなって欲しい」という次の目標に向けて訓練を続け、その結果、訓練開始より約1年後には、3食とも全量経口摂取となり、Nさんの思いは実現したのです。元気の基本は口から食べることから。経口摂取訓練に合わせて四肢の運動機能も向上し、老人車歩行でリハビリ室3周まで可能となったのもうれしい結果でした。
考察
嚥下調整食の見た目をできる限り普通菜に近づけ、食欲が出るように患者さまの経口摂取に対する意欲が向上していくよう栄養科で工夫したことが患者さまの回復への一助となったと思われます。